教育ICTデザイン×ブログ


第11期を迎えて

株式会社ネル・アンド・エムは、2023年11月1日より第11期を迎えます。

2013年に創業し、10年が経過してなお新たな期をスタートできますのも、お取引先様、先生方、子どもたちと保護者の皆様のご厚情があってのことと、心より感謝申し上げます。

 

お陰様で、第10期の初めに立てた事業目標は各項目において達成することができました。

さらには、目覚ましい進化を遂げている「生成AI」を活用した新たなサービス「カリキュラム開発.AI」をリリースし、第10期は新たな段階に進む基礎となる一年となりました。

 

第11期は、Next GIGAにおける問題解決、さらにはBeyond GIGA〜教育DXを進めていくための事業展開を考えております。

その中核となるのは「カリキュラム開発.AI」です。

 

文部科学省「リーディングDXスクール事業」における「生成AIパイロット校」の採択地域からのご相談、

新たな学科の学習内容を発展させたい私立学校様からのご依頼、

小中学校で「STEAM教育」を根付かせたい自治体でのカリキュラム開発、

など、実際にカリキュラム開発に着手している案件が出始めております。

 

ICT機器やソフトの導入など、環境の変化により学びが変わる部分もありますが、

人が代わると元に戻る(変革が後退する)、という課題も散見されます。

 

学びの質を高め、学校の教育活動として再現性を持って展開されるためには、

GIGA環境が「カリキュラム」の中に融合され、児童生徒と教師が共に、新たな学びの価値を体感することが重要だと考えております。

そして、これがNext GIGAの問題解決に資する方法だと確信しております。

 

社是「子どもたちの未来のために、今なにができるか」を体現し、

時代の変化に柔軟に対応するために学びを深めながら、より質の高い学びと新たな価値の提供に取り組んでまいります。

 

第11期も、皆様のご支援とご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。

ICTの活用により学習を阻害する可能性.「認知負荷」について.

GIGA端末やデジタル教材等の活用場面,CBT試行調査,先行研究などから,

「ICTを活用することで学習を阻害しかねない状況を生む可能性」について、知見や認識の共有が重視されていないことを危惧しています。

 

GIGAスクール以前から,大型提示装置や学習者用コンピュータを用いた学びが展開されてきましたが,「期待したほど,学力向上の寄与していない」感覚を抱いているのは,おそらく私だけではないでしょう.

文部科学省が2019年度に実施した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」による,大型提示装置や学習者用(教育用)コンピュータの都道府県別の整備率と,学力学習状況調査の平均正答率との間の相関を調べてみると,正の相関は見られず,非常に弱いものの,負の相関が見られます.
これを単純に捉えることはできませんが,大型提示装置での教材提示環境等の内容について,事実に基づいた一つの見方として考慮すべきものだと考えています,


昨年度より,MEXCBT問題の開発に関する検討の場に参加する機会を得ました.
ここでの議論の中で「認知負荷」というワードが頻出します.
(認知負荷の中で主に「課題外在性負荷」に相当する部分)
紙のテストをCBT化した場合,正答率が下がる傾向が見えてきました.

PC画面での表示方法(レイアウト等)や情報量(問題文以外の文字やアイコン等)によって「認知負荷」を高める場合があり,結果に影響を与えていることが推察されます。

※MEXCBT問題開発検討委員である国学院大学 寺本貴啓 教授 の研究より https://www.jstage.jst.go.jp/article/pamjaep/64/0/64_410/_pdf/-char/ja

 

CBT以外の場面でも,学習者用コンピュータを活用した学習活動を行う際にも,

PC画面のレイアウトや情報量,そして操作性などから「認知負荷が高い」状況が発生しているとしたら,学習成果が高まらないことの要因の一つと考えることができそうです。

認知負荷が高いUIに対峙した場合に,ワーキングメモリを消費してしまい,パフォーマンスの低下につながっている,のかもしれません.

 

参考情報

認知負荷理論を考案したJohn Swellerへのインタビュー その1

認知負荷理論を考案したJohn Swellerへのインタビュー その2

 
紙とデジタルメディアの「認知負荷」に関しては,こうした研究もあります.
「メディアと読み書きの認知科学」柴田 博仁
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isj/59/2/59_204/_pdf/-char/ja
紙とデジタルの優位性を二項対立的に比較するのではなく,適材適所の活用をデザインするための知識として理解しておくことが大切だと思います.
読み進めると分かるのですが,
「キーボード入力が手書きに比べて認知負荷が高い」
ということも指摘をされています.
ただし,主に知識の記憶(インプット→ 短期記憶)の面での問題点として示されている様ですので,
知識を組み合わせてアウトプットすることで「概念的知識」として長期記憶化する様な場面については,キーボード入力による「デジタルテキストとしての扱いやすさ」のメリットもあると思われますので,学習目標に応じた使い分けが重要になりそうです.


とは言え,キーボード入力自体も「認知負荷が高い」という研究結果もあります.

習得する場面では,方略の工夫(認知負荷の低い方法 → ホームポジションの運指から始める)が必須でしょう.


海外の教育機関では,教員が理解すべき知見として「認知負荷」に関する情報発信をしている例も見られます.

 

例「オーストラリア,サウスウェールズ州教育省,教育者向け実践ガイド」

https://education.nsw.gov.au/about-us/educational-data/cese/publications/practical-guides-for-educators

 

様々なデジタル教材(視覚的コンテンツやデジタルドリルなど)や,MEXCBTに代表されるCBT問題などを活用する場面における
「認知負荷」の重要性について,

「認知負荷」が高まっていないか,マイナスの影響を与えていないか,といった視点からの児童生徒の観察・みとり,支援の在り方等について,
教員だけではなく,コンテンツ等の提供事業者(特に開発関係者)や,ICT支援等の外部の関係者の間でも,認識や知見を共有する機会や,共に学び合う場が大切になると考えられます.

これらを重視しないままでは,ICTの活用が学力向上に寄与しないどころか,認知的な特性や困難さを持つ児童生徒にとって不適切なICT環境を見落とし続けることになるかもしれません.


1人1台の学習者用コンピュータを効果的に活用する学びの中には,「認知負荷」のような教育心理学,認知科学的な知見からのアプローチも有効だと思われます.

教壇に立つ教員だけではなく,コンテンツ提供事業者やICT支援員などの外部の関係者にも,子どもたちの学習に関する専門性を高め,適切なICT環境や様々な支援の工夫を講じていくことが必要になるでしょう.

書き手:田中康平

第10期を迎えて

お取引先様、ご関係者様 各位

 

株式会社ネル・アンド・エムは、2022年11月1日より第10期を迎えるに至りました。

GIGAスクール構想や、プログラミング教育といった言葉も聞かれなかった2013年に設立し、

以後、国内各地の教育ICTに関わる先生、研究者、企業、保護者、そして多くの子どもたちに支えられ、

10年目も事業に邁進できることに、大きな喜びを感じております。
同時に、これまで支えてくださった全ての皆様に、深く深く感謝申し上げます。

 

GIGAスクール構想による大きな学習環境の変化の中で、その良さ、その課題、などが顕在化してきたように思います。
特に、課題について思いを巡らせてみると、その背景には、未だ変わらぬ授業観や、企業本意の製品やサービスの提供など、「児童生徒・学習者」の資質・能力の視点の欠如や、大人側の成長を知らず知らずのうちに阻んでいる文化や空気の存在が浮かんでまいります。

1人1台の学習環境の効果的な活用のためには、そのことより大きな視点からの学びの改善について、より専門的な働きかけが必要でしょう。

ICTの前に”教育”について考えることが何よりも大切であり、その視点を通してデジタル社会に生まれ育つ現代の学習者のより良い育ちと学びを探究し、教育に関する新たな課題解決を通した社会貢献に一層努めてまいります。

 

第10期の事業目標は次の通りです。

−−−

【教員研修・授業改善の支援】

かねてより実施しております「デジタル・タキソノミー」を活用した学習デザインによる、教員研修、授業実践のための実践研究の支援に関して、その成果等をまとめたコンテンツを作成し、広く提供してまいります。

 

 【ICT支援員、教育情報化コーディネータ等、専門人材の育成支援】

GIGAスクール環境の円滑な運用・活用を支える専門人材の育成に関して、関係先の支援に加えて、オープン講座等を実施いたします。特に「教育情報化コーディネータ2級」の人材育成に関して注力してまいります。

 

【教育ICT関連企業の課題解決のためのコンサルティング】

GIGAスクール構想後一変した教育ICT市場では、従来のICT活用のイメージから脱却し、日々の学習をより良く支援する、拡張するための学習環境として機能する製品やサービスが求められ、そのようなものだけが生き残る厳しさも併せ持っております。「授業に関することについては先生方にお任せし、、、」という外部意識を捨て、「新たな学びをともに創出するための伴走者」として教育現場を支援しようとする企業を積極的に応援すべく、高い専門性に基づいたコンサルティング業務を展開してまいります。

 

【学校以外の場としての、ICTスクール事業の充実】

ICTスクールNEL佐賀本校を中心に、東京校によるオンライン校・幼保課外スクール、幼稚園・保育園の課内教室「ICTたいむ」について、カリキュラムの充実を図るとともに、多くの子どもたちに届けられるように展開してまいります。

 
【ICTを活用した探究学習プログラムの開発】

1人1台の学習者用コンピュータを含むICT環境を活用しながら、発展的な学びに取り組むための学習プログラムを開発いたします。経済産業省の「EdTech導入」に関連し開発・監修した、(株)JTBが提供する「未来探究ゼミナール」については、データサイエンス領域を従実させるための取り組みを進めております。現在は、目覚ましい発展と遂げている国の教育機関や教育関係者と共に探究する、中高生向けの学習プログラムの開発・監修を進め、来年度のリリースに向けた実証段階に入っております。このような形での学習プログラムの開発にも積極的に取り組んでまいります。

 

【保護者向け施策】

子育てとICTに関する問題解決のために、保護者に向けた情報発信や、体験型のセミナー等を開催してまいります。既に、NELオンラインの主催による無料のWebセミナーを実施しております。

機会がございましたら、ご参加のほどお願い申し上げます。

−−−

 

創業時より掲げております社是

「子どもたちの未来のために、今なにができるか」

を胸に、未来社会を自分らしく生きる子どもたちの姿をイメージしながら、

社員全員で、"より良い教育の未来"のために取り組んでまいります。

引き続き、変わらぬご支援とご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。

 

2022年11月1日

株式会社ネル・アンド・エム

代表取締役 田中康平

 

【大人も試されている】言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等

新学習指導要領の三つの柱
新学習指導要領の三つの柱

 新型コロナウイルス感染症による様々な自粛を余儀なくされる状況からスタートした2021年も、残り僅かとなりました。

 学校教育の面では、GIGAスクール構想による1人1台の学習者用PCや校内ネットワーク等の整備が進み、PCを持ち帰りオンライン授業に参加するなどの試みが各地で実施されました。

 従来のロードマップから振り返ると、内容を大きく変化させた「新学習指導要領」の全面実施期間(2020年度:小学校、2021年度:中学校、2022年度:高等学校)が中盤に入り、多くの学校で、授業の在り方や評価の観点や方法を変えていく(より良く改善していく)試みが本格化し始めた1年だったのではないでしょうか。

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2021年_講演・研修実績

2021年。新型コロナウイルス感染が猛威を振るう状況からスタートしました。

予定されていた研修などのいくつかは延期となったり、実施方法をオンラインに変更するなどの対応を余儀なくされましたが、その時々の工夫を重ねながら対応することができました。

これも、お声がけくださった方々や、運営に関わられた方々の創意工夫のお陰でございます。

改めて御礼申し上げます。

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ICT公開授業とICT講演会のお知らせ

【令和3年11月12日開催:ICT公開授業とICT講演会のお知らせ】

学校法人佐賀龍谷学園 龍谷中学校・龍谷高等学校

 

令和2年度より、ブルーム・タキソノミー(改訂版タキソノミー、デジタル・タキソノミー)によるICTを活用した学習デザインの進化(講師:弊社代表 田中康平)に取り組んでおられる「龍谷中学校・龍谷高等学校」において、

ICT公開授業・ICT講演会が開催されます。

新型コロナの影響を考慮し、Zoomでのオンライン公開授業、講演会という形式で実施されます。

改訂版タキソノミー、デジタル・タキソノミーという理論と、教育実践の往還によって、どのような学習活動がデザインされているのか、どのような学習評価に取り組んでいるのか、など、

高次元の認知過程に働きかける学習活動と、ICTがそれを支える道具となるための方略、その中で主体的に学び合う学習者の姿を見ることができる機会です。

ぜひご参加ください。

 

お申し込みはこちら

 

※その一端については、iTeachers TVでも紹介されています。

https://www.sagaryukoku.ed.jp/hsc/news/001873.php

 

・日時 令和 3 年11月12日(金)12:30 ~ 17:00

・形式 Zoomでのオンライン開催 

・対象 佐賀県外の中学校教職員・高等学校教職員・教育機関関係者 および本校保護者の皆様

・日程 12:40~13:30 本校の概要説明(龍谷の新しい教育)

    13:40~14:30 公開授業1(龍谷の新しい授業)

    14:40~15:30 公開授業 2(龍谷の新しい授業)   

    15:50~16:40 I C T 講演会 株式会社ネル・アンド・エム 田中康平

GIGAスクール時代の教育を豊かにする【8冊の書籍】

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GIGAスクール用ポスター ※無料公開「1人1台時代の創造的な学び」(デジタル・タキソノミー)

デジタル・タキソノミー(digital taxonomy)NEL&M
デジタル・タキソノミー(digital taxonomy)NEL&M

PC1人1台時代の創造的な学び

 

この実現について有効な

「デジタル・タキソノミー」

についてイメージしやすいように、ポスターを制作しました。

PDFファイルで公開します。

無料でダウンロードできますので、職員室や校内に掲示して活用ください。

ユーザー登録不要です。

記事の下部よりダウンロードいただけます。

 

 ポスターの左側に配置しているQRコードからは、弊社が実施している「ICT×学習デザイン研修」の動画を視聴いただけます。

ポスターのベースとなっている理論

「改訂版タキソノミー」

「デジタル・タキソノミー」に関する解説、

これからの社会と学校、STEAM教育の事例、

ICT活用と形成的評価、タキソノミーによる深い学びの実現、

などについて、

5本の動画による再生リストを用意しています。

こちらもぜひ、研修等でご活用ください。

 

タキソノミーの6つの認知過程次元の捉え方などは、こちらのブログもご覧ください。

 

NEL&Mブログ

今こそ、多様な「学習」と「評価」の検討を 

【学習目標分類(T)×学習活動の動詞(V)×ICT活用・環境】検討シート

 

Webポスターはこちら

各段階のボタンをクリックすると、それぞれの概要を読むことができます。

 

1人1台の学習でみられる児童生徒の姿と関連づけながら活用いただけたらと思います。

よろしくお願いいたします。

 

※再生リストの動画コンテンツについては、YouTubeでの視聴となります。

ポスターのダウンロードと併せて視聴していただきたいとの考えから「限定公開」としております。

そのため、動画コンテンツのURLのみを公開・送信・共有することはご遠慮ください。

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書籍出版のお知らせ【学校の大問題】著:石川一郎

学校の大問題〜これからの「教育リスク」を考える〜

 

新型コロナウイルスへに代表される、未知なる課題への対応によって表出した学校教育における事象から、

これからの「教育リスク」について整理し、その解決策を提案。

全編にわたり「ブルームのタキソノミー (タキソノミー ・改訂版)(デジタル・タキソノミー )」の視点が貫かれ、記憶する・理解する、という日本の学校で重視されてきた学習観を、より高いレベルに発展するための方法や例などが紹介されています。

 

第6章「ICTと学校をつなぐためには」では、著者の石川一郎先生と、弊社代表の田中康平の対談内容が記されています。

 

1人1台の学習者用PCを活用した学びを豊かにするために、また学校に限らず家庭を含めた子供とICTの関わりを考えるために、大いに役立つ内容です。

教育関係者、保護者、企業関係者など、様々な立場の方に読んでいただきたい一冊です。

 

学校の大問題〜これからの「教育リスク」を考える〜

章立て〜

 

第1章 コロナ禍で露呈した自律できない学校の問題
第2章 未来の教育を予感させる学校――休校対応の差から考える
第3章 入試問題の変化と学習評価の構造――ブルームタキソノミーと評価
第4章 探究と評価の折り合いをつけるマインドとは 対談 矢萩邦彦
第5章 学校における探究型の学びとPBL――ブルームタキソノミーの活用
第6章 ICTと学校をつなぐためには 対談 田中康平
第7章 いかにICTリテラシーを身につけるか ブルーム・タキソノミーの新解釈
終章 これからの教育でおさえておくべきこと

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