2020年度から順次、小学校、中学校、高等学校で全面施行される「新学習指導要領」
その根幹である
「主体的・対話的で深い学び」
これを実現するための授業改善、学習過程の充実、を目指すには
【学びやすい>教えやすい】
という視点がとても重要になるのではないでしょうか。
これまでの授業について、
「教えること(側)」から考えていたとしたら、
今後は
「学ぶこと(側)」から考えることが求められています。
主体は「学習者」です。
学習者が「学習しやすい」と感じるためには、どのようなことが必要なのか。
NEL&Mのブログですので、ICTの活用を踏まえつつ、4つの項目12のポイントに整理してみました。
学びやすい>教えやすい 第1章
〜脱”記憶型”【単元計画】〜(1)(2)(3)
(1)【記憶した知識を応用 自分(達)のペースで試行錯誤】
「記憶した知識の量」を中心に評価し、その向上のための授業に終始しているとしたら。。。
記憶のための学習活動として、暗唱する、書き取る(写す)、繰り返し書く、ドリルを解く、などが挙げられますが、そればかりでは飽きてしまい、学習意欲も低下し、学習効果も高まらない、という悪循環に陥るかもしれません。
反復で身につく力もあると思いますが、作業のようになっては、一時的に記憶してもすぐに忘れる知識となってしまいます。
得た知識を用いて、自分(たち)なりに考えた手法を試したり、実験したり、必要性を感じて学び、より高度なことにチャレンジしたり、失敗してもトライする機会が与えられているなら、どうでしょうか。
単元計画を立てる際に、記憶型の学習活動ばかりにならないように、記憶した知識を応用できる学習活動を取り入れ、振り返りなども行いながら、知識が活用できた経験の上で知識が意味あるものとして記憶に残るような流れを検討してみてください。できれば、その流れを教える側が細かく指定せず、学習者に委ねることにもトライしてみてください。
単元計画の中で、単元の目標(到達点)を示し、期限を設けつつも、その過程を学習者に「任せる」場面を設定できたとき、
「安心して学習できる」
「自分のペースで進めることができる」
「主体的に取り組むことができる」
という姿を見せてくれることでしょう。
その結果、「知識を活用し、応用し、主体的に学ぶ」ことが実現しやすくなると思います。
例えば、プログラミング教育における試行錯誤などは、知識を応用している、主体的に学ぶ姿の現れと捉えることができます。
AI型教材を活用したアダプティブラーニングにおいても、期限を示した上で学習進度をそれぞれに任せることができたなら、学習者は多様な学びの姿を見せてくれます。(詰め込み型のドリル教材のごとく活用すると、逆効果かもしれません。)
(2)【創造性を喚起する プロジェクト型の単元】
脱”記憶型”の単元計画を検討する場合、社会や身の回りの問題解決と関連付けられそうな問いが提案できそうであれば、学習者の創造性を喚起する「プロジェクト型」の学びにトライしてみましょう。
学習者は、記憶した知識を応用し、そのための道具の使い方などを学び、自分が考えた方法を実行するなど試行錯誤する中で、知識や技能を意味のあるものとして捉え、またその過程を振り返ることで理解を深めていきます。
単元によっては、基礎的な知識や技能習得が中心になる場合もありますが、プロジェクト型の学習に取り組むことで、創造的で、さらに高いレベルの学びに繋げることができるかもしれません。
「プロジェクト型」の単元を計画する場合に、一つの枠組みとして活用できるのが「改訂版タキソノミー」「Digita Taxonomy」です。
(※タキソノミー関連については、NEL&Mのブログ1、2をご覧ください。)
改訂版タキソノミーでは、6段階の認知過程次元(低次〜高次の思考力へ進む段階)が示されています。
1:記憶する 2:理解する 3:応用する 4:分析する 5:評価する 6:創造する
単元を計画する場合に、タキソノミー・テーブルという2次元マトリクス図を用いて、認知過程と単元の流れ(学習過程)を整理することもオススメです。
プロジェクト型の単元計画では、「6:創造する」からスタートし、「1:記憶する」「2:理解する」という基礎的な知識・技能の習得へ進むと、どうでしょうか。
(参考記事:Using Project-Based Learning To Flip Bloom’s Taxonomy For Deeper Learning)
単元の最初の授業で実際の社会問題を提示し、
「この学習のゴールは、今見せた社会問題の解決策を考え、提案することです。そのためには、どういった知識や手段や情報が必要でしょうか?」
という問いから、学習者を単元の世界に誘うのです。
社会問題の解決策を提案する、という現実的な目標や課題を意識しながら学ぶことで、テスト用の知識ではなく、意味のある内容として記憶した知識を用いて、問題の解決策を創造する学習を展開できるようになります。
ただし、時間は有限です。効率よく学び、問題の解決策をアウトプットしていくためには、ICTの活用も重要になってきます。特に学習者用の情報端末や情報収集や共有のためのネットワーク、発信のための方法(Webサイトやブログ、ポスター作成など)も検討し準備しておきましょう。(この部分は、第3章で詳しく記載します)
(3)【学習者目線の目標/課題の設定】
単元計画を検討し、知識や技能を応用したり、創造性を喚起するプロジェクト型の単元にトライする時に、学習者にとってどのような「目標」や「課題」が設定されているのかは、とても重要です。
目標がアバウトであれば、どこに向かい、どう取り組んで良いのか、分かりにくいでしょう。
課題が難しすぎると、「私(達)には無理」と、端から諦めてしまうかもしれません。
「正解のない問いに対して考えよう」という場合もあると思いますが、その過程においてマイルストーン(目印)となるような目標が存在しなければ、迷子のようになってしまうかもしれません。
目標や課題設定の観点の一つとして「ARCSモデル」(J.Mケラー 1983)を紹介します。
A:Attention(注意喚起)_ 関心を高める、好奇心をくすぐることができるか?
R:Relevance(関連性)_ 個人の目標や希望や生活などと関連しているか?
C:Confidence(自信)_ 自分(達)で達成できるか?成功体験となるか?
S;Satisfaction(満足)_ 周囲に認められる。賞賛される。など満足感を得られるか?
また、社会人組織の目標設定で用いられる観点ですが、「SMART」も紹介します。
S:Stretch _ 背伸びした目標(Specific _ 具体的な目標 とされる場合もあります)
M:Measurable _ 測定可能な目標
A:Achievable _ 達成可能な目標
R:Realistic _ 現実的な目標
T:Time-related _ 期限付きの目標
学習者主体の活動が上手くいかないときは、「目標/課題の設定」を見直してみると改善される場合があります。
目標や課題において、授業者の理屈が強すぎてはいけません。
「ARCSモデル」や「SMART」などの観点を参考に、学習者の目線から「どのように感じるだろうか?」「どう捉えるだろうか?」「興味を抱くだろうか?」などをイメージしながら、目標や課題を設定してみましょう。