2000年に発表された、「改訂版タキソノミー 」(Anderson, Krathwohl)
新学習指導要領の審議中に取り上げられたこともあり、近年国内でも注目され始めています。
その理解の助けとなる書籍と
国内での教育実践事例を紹介します。
写真左:A Taxonomy for learning, teaching, and assessing.(A Revision of Bloom's Taxonomy of educational objectives.) Anderson, Krathwohl 2000/12 ※原著です
Bloomのタキソノミー (教育目標分類学)を批判的に捉え直し、授業実践と評価について踏み込んだ提案がなされています。
この中で示された「The Taxonomy Table(タキソノミー ・テーブル)」は、6段階の認知過程次元や4つの知識次元で構成された2次元マトリクス図です。認知過程を発展させるための方略と評価に関する検討を助け、単元の流れを視覚的に表現できる、非常に優れたフレームワークとして活用できます。
写真右:目標に準拠した評価の考え方と実際(教育フォーラム28) 責任編集 梶田叡一 2002/3
特別論文「アンダーソンとクラスウォールの新しいタキソノミー 」有本昌弘
※左の原著は全て英文です。読解が難しい場合には、こちらの論説で概要を掴むことができます。
改訂版タキソノミーの優れた点は「学習者の動詞(姿)」を指標としながら、高次元の認知スキルの獲得を促す部分と、その中で「メタ認知」についても明示し、それらを評価に用いようとデザインしている部分でしょう。
Bloomのそれとは、目指すものが違うため、識別した上での理解や活用が大切です。
※Bloomのタキソノミー は、試験問題の分類を目的とした指標です。学習者主体の授業実践の検討は「改訂版タキソノミー 」の考え方が重要です。
学習者中心のICT活用が発展してきた近年では、Digital Taxsonomy として、デジタルデバイスや情報通信技術を活用した場合の「学習者の動詞(姿)」が整理・提案され、単元を設計したり評価する(主に形成的評価)する素材の一つとして利用されています。
(参考文献)
・Bloom's Digital Taxonomy 2008 Andrew Churches
なお、改訂版タキソノミー (その後に提案されている、Digital Taxonomy 含む)を援用し、実践的研究を重ねた国内の事例は次の通りです。
・墨田区立錦糸中学校(令和3,4年度 東京都 情報教育研究校、墨田区教育委員会 研究協力校)
研究紀要,研究授業指導案
タキソノミー・テーブル (2023年3月追記)
・中学校での授業改善における学習目標の検討とICT活用(JAET2017実践研究論文)
・Digital Taxonomy を用いた単元設計のための教員研修(JAET2018実践研究論文)
書籍による基礎的な理解の上で、各学校の実践を見ていただくと、より深い理解と共に、実践の具体的なヒントが得られるのではないでしょうか。
少々難解に感じる部分もあると思いますが、何年も実践研究を継続するに値する内容です。
新学習指導要領の実現とGIGAスクール構想時代の単元設計と評価を助けるための考え方を形成する。その一助となる有用な教育学的概念だと確信しています。