11月9日(金)
インテックス大阪で開催された、教育ITソリューションEXPO。
リコーブースにて「教育情報化コーディネータ1級が提案する、新時代の教育とICT」と題してお話しさせていただきました。
(リコーの皆様、ありがとうございました。)
※ブログの最後で、当日のスライドを公開しています。
・教育情報化コーディネータとは、どんな資格?どんな能力?
ということからスタート。
ちなみに、1級(指導者レベル。国や都道府県レベルの教育の情報化について設計・助言できる)は全国で5名が認定されています。
地方の一介の教育ICT営業マンとして3級を取得したのが2006年。
干支が一周する12年後に、ようやく1級に到達することができました。
この間、様々な業務に関わる中で、現場の先生や子供達、研究者の先生方、メーカーの方々に多くのことを教えていただきました。
深く感謝しております。
今のところ、私が最年少のようです。
今後もっと若い人が認定されるように、サポートしていきたいところです。
・教育とICT。そもそも、なぜICTを導入するのか?
〜ICTは、学力向上に寄与しないのではないか〜
多くの自治体、教育委員会では「学力向上のためにも、ICTを導入しましょう」という論調で予算を計上し、学校のICT環境を整備しているものと思います。
客観的に見たときに、
例えば、「全国学力・学習状況調査」の結果と、「電子黒板の整備率」に相関を見出すことができるだろうか?と投げかけました。
毎年、この二つを比較していますが、
「整備をしただけであれば、学力調査の結果との相関は見られないのではないか」
というのが私の見立てです。
(活用方法によっては、学力向上に寄与できる可能性はあると思いますが、その逆も起こり得るのでは、、、)
・電子黒板が、知識の記憶や理解にマイナスに働きかねない
〜気をつけておきたい、電子黒板の活用例〜
電子黒板を活用した授業(日常の授業から、ICTスーパーティーチャーと呼ばれる方の研究授業まで)を多数見てきた中で見つけた「やっちゃダメ」な事例をピックアップして紹介しました。
「その活用は、、、」
というシーンには、少なくない頻度で遭遇します。
電子黒板を活用される先生、提案する企業の方には、ぜひ留意いただきたいところです。
ICTを導入・活用する時こそ、
環境の変化などが、どう子どもたちに影響しているのか?
十分思考しているのか?
学習に向かっているのか?
など、しっかりと観察することが大切です。
「みとり」「形成的評価」の部分です。
ICT環境に限らず、授業改善を行う場合には不可欠な視点ですね。
・テクノロジーと子育て(教育)、不確かな未来への心構え
〜ICTを通して教育に関わる身として、常に振り返り、意識している2つのこと〜
1)テクノロジーが、子どもたちの育ちを阻害してはならない。
2)未来を予測できないなら、創造しよう。
リンカーンが生まれた時代(インターネットが存在しない時代でも、優れた人間が育つ)とは違い、
今は、子どもたちが、様々なことを学び、育つ過程において、テクノロジーに触れ活用することからは逃れがたい時代です。
無作為に与えられたとしても、
自ら有効に活用できる子もいれば、他のこととのバランスが上手く取れなくなる子もいます。
学校のICT活用でも、
思考を働かせることもあれば、その逆で思考を止めることにつながる場合もありえます。
また、ICTが本来持っている機能に制限をかけ、限定的な活用に止めようとすることも珍しくありません。
子どもたちが10年後、20年後の社会で自分らしく活躍し、より良い世の中を築いていくために、
ICTも活用しながら、創造的な態度や能力を育むことが大切なのだと思います。
・新時代の教育とICT
〜デザイン=設計。設計図の書き方・使い方〜
教育の情報化の推進に関わる中で、ついつい
「あの機器・あのソフトは、あの学習で使えそうだ」
と、ICTから授業や学習活動を考える癖がついていることに、ある日気がつきました。
「目的と手段」を取り違えていたのです。
これでは、ICTを導入・活用しても、なかなか上手くいきません。
「あの機器・あのソフトを使いたい(使って欲しい)がための授業なんじゃないのか」
という見方もされてしまいます。
「単元や学習目標から、ICTの活用(する・しない)を考える」
学習目標に向かう=評価
という部分も大切にして、ICTが「何に対して効果的なのか」を考えていくこと、
当たり前のことを忘れないようにしたいと思っています。
・改訂版タキソノミー
〜学習者が主役、「学習目標」と「動詞」で考える、ICT×学習デザイン〜
1956年の「ブルームのタキソノミー(教育目標分類学)」
この改訂版となる
2001年の「改訂版タキソノミー(Revised Taxonomy)」
この中で示された6つの認知次元と、これに対応した学習活動の「動詞」から学習過程を検討する。
新学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」との親和性が非常に高い学習理論だと考えています。(中教審の議論の過程からも読み取ることができます)
改訂版タキソノミーの基本的な考え方を説明し、
ICTの活用が6段階のどこに働きかけているだろうか?
ということを考えていただきました。
これまでのICT活用は、記憶や理解の段階に対して働き変えていることが多く、応用・分析・評価・創造という段階まで進むことが少なかった、ということを振り返るきっかけになるかもしれません。
実際、この内容の研修では、
「記憶に偏重した授業が多かったのではないか?」と振り返る先生の姿が多く見られます。
研修では、その後に一歩踏み込んで「タキソノミー・テーブル」というマトリクスを用いて「単元設計」にトライしていただいています。
その例もお伝えしました。
・形成的評価
〜日々の実践における「やわらなか評価」と「授業改善」〜
これまで、教育の情報化が思うように進まない、ICTを導入しても上手く活用できない、といった課題を目にしたり、相談を受けることが少なくありませんでした。
その一因として、「評価との一体化」という視点が薄い(欠けている)ことがあるのではと考えるようになりました。
ここでの評価とは、学習結果の評価(定期考査等に代表される総括的な評価)もあると思いますが、
新しい試みの中で、子どもたちが
「何ができるだろうか」
「どのように学ぶことができるだろうか」
ということを「みとる」、いわゆる形成的評価が重要になると考えています。
1984年に出版された梶田叡一先生の著書「形成的評価のために」
このなかに書かれている「やわらなか評価」の一節を引用させていただき、日々の実践における授業改善の視点について提案しました。
(本書にもタキソノミーに関する内容が書かれていますが、1956年のタキソノミーによるものであり、2001年の改訂版とは異なり視点が含まれています。ここはご留意ください。)
最後に
・ICTは、学び方を学ぶ(身につける)学習過程の充実や発展に寄与できるのではないか
・先生が変われば、授業が変わる。授業が変われば、評価が変わる。評価が変われば、こどもが変わる。
この二つを伝えさせていただきました。
当日会場に聞きに来てくださった皆様、運営スタッフの皆様、ありがとうございました。